11月定例県議会-発言内容(吉川彰一議員)

 

◆吉川彰一

 改革・新風の吉川彰一です。最近読んだ本の一節に、人間以外の動物は今に生きていて、未来を考えていないとありました。

 間もなく始まる総選挙を前に、失われた20年から成長軌道への復帰を目指し熱い論戦が既に行われているところです。我が国経済が再び成長軌道に乗り、ジャパン アズ ナンバーワンとの呼び声を再び取り戻す最善の策は本当に大胆な金融緩和でしょうか。日銀当座には30兆円とも40兆円とも言われるマネーが積み上がり滞留する中で、金融緩和やこれに関係する財政政策が万能というなら、サブプライムローンから火がついた2008年のリーマンショックの検証をまずする必要があるのではないでしょうか。

 世界経済のグローバル化に対して本県経済も対応に迫られる中で、インド、中国など新興国の知的水準の上昇と経済発展の相関が注目されております。知の競争時代に入ったと言っても過言ではないと思います。

 幸い、我が国は、1989年に利根川進氏、そして、本年、京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞し、この分野の先鞭をつけてきたこと、そして確かな研究実績が世界からも認められるところです。

 本県においても信州大学を中心にiPS細胞の医療分野への応用が研究として進められ、また、工学的分野にはなりますが、須坂市出身の遠藤守信教授もカーボンナノチューブの研究で山中教授とともにノーベル賞候補として名前が挙がったことも一再ではありません。本県の科学技術について持ち合わせる知識水準は決して低くはないと言えるのではないでしょうか。

 知というこれからの時代をリードする上で欠くことのできない財産について、本県での科学技術の重要性と、これを県として産業に生かす取り組みについて阿部知事はどのようにお考えでしょうか。

 

◆知事(阿部守一)

 我が国がこれからも発展をし続け、そして信州も元気になる上では科学技術の振興は大変重要だというふうに思っておりますし、県としても知の拠点をしっかりつくっていかなければいけないというふうに思っております。

 科学技術の振興、重要な政策だというふうに考えておりまして、今、吉川議員の御質問にも出てまいりましたけれども、遠藤守信教授を委員長とする懇談会から御提言をいただいて、一昨年、長野県科学技術産業振興指針を策定をしています。この3月には、この指針に基づいてものづくり産業振興戦略プランを作成して、先進的な研究開発、産学官の連携でスタートをさせ、新しい産業の創出に取り組んでいこうとしております。

 現在進行中の代表的な研究としては、信州大学と県が共同提案し科学技術振興機構で採択をしていただいた、新しいナノカーボンに関する大型プロジェクトがございます。世界的権威の遠藤教授を中心に進めております。世界トップクラスの研究者を招聘し、ドリームチームを結成してナノカーボン分野の世界最先端の研究開発が行われているところでございます。この研究の応用事例としては、放射線を吸収する防護服への応用などが期待されております。また、さらなる成果の応用についてテクノ財団が中心に取り組んでいます。

 また、医療分野におきましては、産学官金、経営者協会、信州大学、八十二銀行、テクノ財団、長野県が連携して、世界最先端の医療機器の開発を目指したプロジェクトも始まっております。世界最高速レベルの小型DNA増幅装置などの開発を進めているところでございます。

 アジア新興国の工業力が台頭し、エネルギー供給等の新たな課題も発生している今日、知の結集による科学技術の役割はますます高まっているというふうに考えております。

 県としても、産業界あるいは大学等と連携を図りながら、科学技術の振興を図ることによって知を備えた人材を中心とした国際競争力ある産業の育成を重点的に進めてまいりたいと考えております。

 以上です。

     

◆吉川彰一

 こうした科学技術の中でも特に注目されている生命科学の分野を中心に、新規事業の創出に向けてどうつないで豊かな長野県づくりの施策とするのでしょうか。太田商工労働部長にお尋ねします。

 また、生命科学の中でも医療分野など健康を支える分野の事業展開については、生み出される製品や事業を実行する上で評価が大きなポイントとなってきます。例えば、人工心臓が1万個つくられ1万人の命が救われても、1万1個目が不良品で、これを市場に送り出してしまったとしましょう。1万人が救われたことよりも、1人が犠牲になったことで1万人を救った功績は社会の中で帳消しとなり、さらには1万2人目の救いを求める人の救いの道を閉ざしてしまう可能性さえあります。

 再生医療において、事業や製品をどういった方法で、どこまでの水準で評価されているか。眞鍋健康福祉部長にお尋ねします。

 

◆商工労働部長(太田 寛)

 医療分野を中心といたします新規事業の創出についての御質問でございます。

 県では、長野県ものづくり産業振興戦略プランにおきまして医療分野を目指すべき重点分野と位置づけまして、医療現場のニーズにこたえる新しい機器等の研究開発と早期事業化に産学官連携によって取り組んでいるところでございます。

 具体的には、本県の産学官連携支援拠点であります長野県テクノ財団がメディカル産業支援センターを松本市に設置しておりまして、信州大学医学部や県立こども病院等の医療現場のニーズを企業の研究開発へつなぐコーディネート活動、県内企業に対しまして薬事法など医療機器開発に係る法規制をわかりやすく解説するセミナーの開催、国際的に優位な研究開発や事業化を進めるための欧米における連携企業、大学等の情報提供、これなどを進めているところでございます。

 また、信州大学におきましても、長野県テクノ財団との密接的な連携のもとに、血液検査の時間短縮につながる装置など、企業の技術者を大学に招聘しての医療機器の研究開発、また、企業の技術者を対象として臨床研究の進め方などを学ぶ研修会の開催、また、県内企業86社から成ります信州メディカル産業振興会によります産学官のシーズ、ニーズ情報の共有化などを進めているところでございます。

 また、信大医学部に既に設置されております医学的な実証試験用の機器を企業の利用に供する信州メディカルシーズ育成拠点に加えまして、来年1月末には、医療従事者と企業技術者が緊密な連携のもとに共同研究ができますレンタル研究室を整備いたしました信州地域技術メディカル展開センターが竣工する予定であります。

 このような医療分野での新規事業創出への支援によりましてすぐれた医療機器などの創出がなされ、それらが県内で広く活用されることが本県の健康長寿の一層の進展にも貢献するものと考えております。

 今後とも、信州大学などの学術研究機関との連携を深めまして、医療分野での中核的リーディング産業の創出に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 

◆健康福祉部長(眞鍋 馨)

 私には医療分野における安全性の確保についてお尋ねをいただいております。お答え申し上げます。

 医薬品、医療機器の安全性の確保、これ自体は非常に重要なことというふうに考えてございます。我が国では、新たに医薬品、医療機器が開発されようとする場合は、国もしくは国から業務委託を受けました独立行政法人医薬品医療機器総合機構、これはPMDAというふうに通称しておりますが、こういったところが提出された動物実験や臨床試験、これは人での比較対象試験などのデータでございますけれども、こういったデータを用いて、ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)というものがございますけれども、こちらのガイドラインなど、世界標準で高い水準の審査を行って、安全性、そして有効性を総合的に評価し、承認されたもののみが市場に流通するということになってございます。

 医薬品は、有効性、安全性とともに、それらの総合評価が大事だということでございまして、その基準が国際的に調和したものが今ございますということでございます。

 御指摘いただきましたiPS細胞ですとか、最近は生物由来の製品もたくさんできてございますけれども、これもバイオロジックスの規制ということで国際的な調整が今整えられているところでございます。こうしたところで承認審査が行われて、有効性、安全性が確認されたものが市場に流通しているということでございます。

 また、市場に流通している医薬品などの品質の確認も国と都道府県で役割を分担して行っているところでございます。

 以上です。

 

◆吉川彰一

 我が国には1968年の札幌医科大学での和田移植という苦い経験もあります。また、最近においても、山中教授のノーベル賞受賞発表の直後に、東京大学の研究員による全く根拠のないiPS細胞の研究業績に多くの人たちが踊らされた事件もありました。

 研究の現場と一般社会の人々との意識にギャップが生じたり、研究についての客観性が一般社会から求められることもこれからますます多くなると思います。評価や規制が進歩と同じ歩調をとりながら、さまざまな分野の専門家の英知によって精緻で信頼感の高いものとなることをお願いしておきます。

 さて、かつて、政府の事業仕分けでスーパーコンピューターの研究開発について、世界一になる理由は何があるんでしょうか、2位じゃだめなんでしょうかとの仕分け人のフレーズが有名になりましたが、1番と2番の差が紙一重であっても、この差はかわりがたく、若者や子供たちがこうしたサイエンスのフロンティアに触れたとき目の輝きは1番がはるかに大きいでしょう。

 科学技術の未来をつなぐ若者、特に高校生が先端的な科学技術に触れ、心に響く機会があることは大変重要なことであります。本県はどのような取り組みを行っているのでしょうか。山口教育長にお尋ねします。

 

◆教育長(山口利幸)

 先端的な科学技術に触れる取り組みについてのお尋ねでございます。

 本県では、飯山北高校、屋代高校、諏訪清陵高校の3校が、文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール、SSHと略称しますが、この指定を受けまして、県内外の大学や企業と連携しながら先端の科学技術を学ぶ理数教育を推進しております。

 また、サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)事業もあるわけでございますが、上田高校や岡谷工業高校など10校が採択されまして、大学と連携した課題研究あるいは大学の施設を利用した生徒実習などを行っております。

 また、県では、SSH指定校の取り組みを理数科設置校等を初め各学校へ広めて理数教育の質を高めることを目的にしまして、信州大学や諏訪東京理科大学と連携しまして信州サイエンスキャンプ事業を実施しております。この事業の中身は、大学と連携した課題研究合同発表会や研修会、科学の甲子園全国大会出場をかけた長野県予選、県出身の研究者による講演会等を開催する、こういった事業の中身がございます。

 このほかにも、大学と連携協定を結びまして大学の施設を利用した生徒実習を行っている学校でありますとか、あるいは修学旅行に出かけるときを活用しまして、国内有数規模を持つ自動車工場でありますとか、あるいは造船所見学をコースの中に組み入れまして生徒の学習意欲の向上に役立てている、そういった工業高校もございます。

 一端を申し上げましたけれども、このような体験を通して、生徒自身により県合同の課題研究発表会が運営されるなど、おもしろさ、やりがいに動機づけられたいわゆる科学する心、こういったものが育ってきていると、こんな認識を持っております。

 こういった取り組みにつきましては、今後もさらに本県の理数教育を発展させるために生徒の心に響く機会づくりが一層進みますよう、県としても各学校の取り組みを支援してまいりたいと、こんなふうに考えております。

 

◆吉川彰一

 さて、私も、かつて、週に1回、二十歳前後の学生を前に専門学校で経済関係の授業を持ったことがあります。私は、学生が教えることを頭で理解するよりも心に伝わるよう授業に取り組んだつもりです。そんな中で思い出される一こまがあります。それは、ある事柄にどの程度関心を持ち、不明なところは考えながら答えてほしいと思い質問を投げかけた学生が、やおら携帯電話を取り出し、カチャカチャといじった後、よどみなく正しい答えが返ってきたことでした。ちなみに、この子は櫻井教育委員長と同じ阿智村の子でした。

 よりにもよってこの私に教わった学生たちは随分迷惑だったかもしれません。しかし、私は、問いかけても社会や人生への思いをほとんど語らない若者の存在が本当に憂慮にたえません。私の学生時代、ほんのわずかな期間ですが、アメリカの大学で机を並べた東南アジアや中央アジアの留学生たちのことが思い返されます。身なりは粗末でも、はっきりした考えを持ち、私の心に伝わってきたことと余りにも対照的だからです。

 櫻井教育委員長にお尋ねします。

 私は、教育の場は建前でなく、本当に子供たちの心に伝わるような指導をしてほしい、そして、それぞれの子供たちがしっかりとした考えを持ち、成長し、やがて大人となってこの日本を支えてほしいと思います。いかがでしょうか。

 子供たち一人一人がしっかりとした自分の考えを持つため、どう文字どおり教育することが必要でしょうか。何かお考えがあればお示しください。

 また、旧清内路村では、江戸時代より受け継がれる花火づくりによって、上下清内路それぞれで皆さんが一つになって、地域の文化、きずな、誇りを親から子へ引き継ぐ土壌になっていると私は考えます。

 閉村時の2009年、人口718人だった清内路村が、櫻井久江村長のもと、教育に手厚い施策を行う原点ではなかったのでしょうか。そうした村の子供たちのことを思う熱心な地域の皆さんの思いと実践は、地域を挙げて子供を育て、地域と学校の連携をより強固にするといったモデルにもなるのではないかと思われます。

 市町村の規模によらず、県下どの地域においても小学校や中学校が住民にとって一番身近な学校であることは共通です。旧清内路村での経験を踏まえ、地域の思いと学校をつなぐためにはどのような視点から考えればよいか。櫻井教育委員長にお考えをお聞きします。

 

◆教育委員会委員長(櫻井久江)

 自分の考えを持つための教育についてのお尋ねでございます。

 子供たち一人一人が将来への自立に向けて自分の考えを持てるようになるということは人格形成の基本であると認識しております。しっかりとした考えを持つためには、自然や社会、さまざまな人にかかわるといった豊かな体験が大切であると考えます。子供たちは、体験をすることによってみずからの思いや考えを持ち、語り出します。さらに、相手の考えを聞き、友と語り合うことによって、より自分の考えを深めていくものと考えるところでございます。

 そのためには、お互いの考えを聞き合える学級であることや、子供たちの考えを共感的に受けとめることができる教員の存在などが重要であり、このような人間関係の中で子供たちは自己肯定感を高めていくものと考えます。

 幼保小中高を通じてこのような学習を行うことにより、子供たちがしっかりとした自分の考えを持てるような教育を進めてまいりたいと考えております。

 次に、地域の思いと学校をつなぐための視点について。

 私の生まれ育った旧清内路村は、猫の額のような畑を切り開き、出作りまでして耕してきた本当に貧しい村でありましたが、何はなくとも教育だけはとの信念のもと歩んでまいったところであります。

 子供は地域の宝、地域みんなで育てるものとの思いが強いところでもありました。そして、学校は村の誇りでもあり、文化の伝承の場でもありました。手づくり花火をみんなでつくり、伝統食の日は地域の人々と朴葉寿司や五平餅をつくり、タタキゴマや炭焼き、赤根大根をつくったり、一緒になって地域の宝を受け継いでいく、そして、その先生は地域のおじさん、おばさんたちです。自然や土になれ親しむこと、小さな生き物をかわいがること、そんなことが伸び伸びした教育のできる土壌だった気もいたします。

 現在、学校、家庭、地域の連携の推進が必要であると言われております。旧清内路村にかかわらず、学校が地域に溶け込んでいるというのは、子供たちに地域の多くの人がかかわり、机の上だけでなく、体験を通じて学ぶことで健全な子供を育てていくことにつながっていきます。そういう学びの中で、子供たちは、人としてどう生きるか、どう考えるかが自然と身についていくと考えております。考える力をきちっと身につけさせることでもあるというふうに思っております。

 まとまりませんが、地域の思いと学校をつなぐための視点ということで以上であります。

 

◆吉川彰一

 櫻井委員長は、清内路の村政があの混迷をきわめた中、村長選の告示の前の晩にかつぎ出され、あえて火中のクリを拾うことになりました。その後の村政を例えるなら、清内路という小舟を大しけの中で無事阿智村へつなぎとめるまでの必死のかじ取りが続いたことを記憶しております。

 今、櫻井委員長は、再び違う海でキャプテンとして乗り込んだ船を、荒波を乗り越え、穏やかな豊饒の地へといざなってくださることができる。そうかたく信じ、私の質問を終わらせていただきます。

 

カテゴリ

アーカイブ