2014.9月定例県議会-発言内容(依田明善議員)

 

◆依田明善

 まず初めに、このたびの御嶽山の噴火により犠牲になられた皆様方を心より悼み、御冥福をお祈り申し上げます。

 それでは質問に入ります。最初に、県産材の利用促進について御質問いたします。

 明治5年の10月に群馬県の富岡製糸場が操業いたしました。日本の近代産業の幕あけであります。あれから142年の歳月が流れたわけですが、その歴史は波乱に満ち、経営者も何度もかわり、その業績にも大きな浮き沈みがありました。それでも、昭和63年の操業停止まで日本の製糸産業をリードしてきたことには変わりはありません。

 しかも、本年6月にはついに世界遺産として登録され、多い日には実に6,000人以上が訪れるという一大観光名所となっております。その中でも特に目を引くのが世界的にも大変珍しい木骨れんがづくりの建物であります。骨組みは木造、屋根は日本瓦、壁はれんがを積み上げ、小屋組みは西洋の技術である洋小屋となっており、まさに和洋折衷の構造美を極めた、錦絵にも登場するほどの風情を醸し出しております。

 洋小屋とはトラスという三角形の集合体によって力を分散させる工法のため耐震性もよく、太いはりや桁で荷重を支える日本の和小屋工法と比較しますと柱を減らした広い間取りが確保できます。また、洋小屋は高品質の木材は余り必要とせず、比較的小さな寸法の材、すなわちまさに伐期を迎えている一般流通材で十分に間に合います。

 富岡製糸場においても、大正12年の関東大震災を初め数々の地震や風雪に耐え抜いてきたのは紛れもない事実ですが、見たところ壁の中には筋交いもぬきも入っている様子がありません。したがって、この洋小屋工法の耐震性能においてその優位性は否定できないというのが率直な感想です。

 また、本年9月5日、農政林務委員会において飯田市鼎にあります上山区民センターを調査いたしました。この建物の大会議室を見て気づいたのは、富岡製糸場と同じ洋小屋を採用しているということです。美しいトラスの骨組み、しかも9.1メートルというスパンを飛ばした広い会議室です。室内に柱がありませんので、とても開放的な印象を受けました。

 かつて、官舎や学校といった公共建築物は全て木造でした。あれから大きく時代は変わりましたが、今再び循環型社会の構築と相まって木造建築物は見直されております。

 平成2210月1日には公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律が施行され、本県でも県産材利用方針を策定いたしました。

 しかしながら、平成21年度及び22年度の実態調査では木造住宅における県産材利用の割合は19%にとどまっています。一番の理由は値段が高くて手が出ないということのようですが、であるとすれば、間取りが広くとれることや、一般流通材が使用できることによる材料供給の容易さに加え、価格が安くなるというメリットがある洋小屋工法にもっと注目するべきだと思います。

 また、設計士の皆さんからも、洋小屋の骨組みは見た目にも美しいのでぜひ取り入れたいといった意見もお聞きします。

 県においてはこのような理由から洋小屋を積極的に推奨すべきだと思いますが、建設部長の御見解をお聞かせください。

 

◆建設部長(奥村康博)

 県産材の利用促進についてのお尋ねでございます。

 議員御提案の洋小屋組みは、いわゆるツー・バイ・フォー工法の住宅や洋風住宅に用いられているほか、和小屋に比べて柱と柱の間隔を広くできることから、広い空間を必要とする学校や研修施設などに取り入れられております。

 県有施設におきましても、屋代高等学校附属中学校の管理教室棟や蘇南高等学校の特別教室棟で洋小屋を採用しているところでございます。このように、洋小屋の特性が生かせる建物においては引き続き採用してまいりたいと考えております。

 なお、公共建築物の整備において県産材の活用は木を生かした力強い産業づくりの実現を目指す観点からも重要なことと考えておりまして、可能な限り木造化や木質化に努めているところでございます。

 また、一般住宅におきましても、信州型住宅リフォーム促進事業などにより県産材利用を促しているところでございますが、さらに施工事例をホームページ等で広く紹介するなど民間建築物への推奨を図ってまいります。

 以上でございます。

 

◆依田明善

 御答弁いただきました。

 製材業というのは、本来、オペレーターの腕前が利益を大きく左右する業種です。丸太の素性を素早く判断し、単価の高い構造材や建具材を最優先にして材を切り出すことが重要となるわけです。

 しかしながら、信州F・POWERプロジェクトにおいては、床材の大量スピード生産ばかりがクローズアップされており、構造材や建具材の生産は二の次になっております。私は、このプロジェクトにおいては構造材等の需要の掘り起こしが大きな鍵を握っていると思います。

 ドイツの林業が盛んな理由の一つは、政府の認定を受けた森林官と呼ばれる人々が立木の1本1本のデータをオンラインで集積し、国民の多種多様な注文にあわせて各地の製材所や多くの業種の人々がその生産、供給に携わっているからだと言われております。まさに適材適所の無駄のない林業が展開されているわけですが、我が県の林業もそういった木遣いのある施策が必要だと思います。

 若い世代にも受け入れられる木造住宅を研究することも大切でしょう。無垢の県産材をより安く、より多く使用する構造の提案等も欠かせません。長野県が名実ともに日本一の林業県になりますよう、戦略的な施策の推進を強くお願いを申し上げます。

 次に、ものづくり文化の醸成と人材育成についてお尋ねいたします。

 先ほど取り上げました富岡製糸場でありますが、現在、木造の部分は若干の収縮が見られますが、れんがにおいては断面欠損も少なく、形状も色合いも大変良好な状態を保っていることに驚かされます。

 このれんがは日本の瓦職人がフランスのれんが職人の指導を受けながら焼いたそうですが、試行錯誤の末、本場フランス製と遜色のないほどのれんがを短期間のうちに焼き上げたそうです。また、当時はモルタルが日本にはほとんどありませんので、目地にはしっくいを使用しました。これも地元の壁職人の親子が研究を重ね、海藻、漆、けものの煮出し汁等を調合し、より粘着性と耐久性を兼ね備えたしっくいを短期間のうちに開発したそうです。

 大工工事のみならず、山からの木出し、基礎工事、石積み、れんが積み、建具、塗装、金物製造等さまざまな分野において地元の職人が結集し、絶対に失敗が許されない前代未聞の建築物に挑戦いたしました。そして、明治政府が国の命運を託した富岡製糸場がわずか1年半の工期で完成し、近代日本の夜明けに寄与したわけであります。

 であるとすれば、プライドと意地にかけて建物を仕上げた職人さんたち、そして彼らを結束させた尾高惇忠という地元の名士、さらには、欧米列強の属国になることをおそれ、近代的製糸場の建設を急いだ大隈重信や伊藤博文とその命を受けた渋澤栄一、あるいは建物のお手本となった横須賀製鉄所の建設に心血を注ぎながらも幕府側ということであらぬ疑いをかけられ、打ち首という非業の最期を遂げた小栗上野介らも立派な世界遺産の一つであろうと建物を視察しながらそんな思いを強くいたしました。

 願わくば、ものづくり産業が国を救ったというような日本人の崇高な歴史こそ子供たちにしっかりと教える必要があると思いますが、教育長のお考えをお聞かせください。

 大量生産、大量消費の時代の中、お金さえ出せば多くのものが間に合う便利な社会、そんな状況下では手づくりということに価値を見出せなくなってしまうのも無理はありません。親の世代が手づくりの手間を惜しんで既製の日用品や料理で済ます傾向が強くなれば、当然子供たちも同じ発想になってしまいます。会話もなく、スマートフォンの液晶画面を指先ではじく親子は至るところで目につくようになりましたが、家庭内で日曜大工や料理を楽しんでいる親子の話などは余り聞かなくなりました。これではものづくり文化の醸成は期待できませんし、職人や技術者に対する尊敬の念も育たないと思います。

 たとえ日本人がすぐれたものづくりのDNAを内包していたとしても、幼少期においてそれを目覚めさせる機会が少なければその才能は眠ったままになってしまいます。ものづくり文化の醸成が危機を迎えている今、まずは学校教育の中からこの状況を打破し、家庭にも影響を与えていくべきだと思いますが、教育長の御見解をお聞かせください。

 2年前、本県において技能五輪が開催されました。我が県からもさまざまな職種から若き精鋭が出場し、大きな盛り上がりを見せました。私は、この大会を契機に、ものづくりにスポットが当たり、若者が職人を目指すきっかけになるものと大いに期待したところでありますが、あれから2年がたった今、その効果はどのようにあらわれているでしょうか。産業労働部長にお聞きいたします。

 富岡製糸場の大盛況により、富岡市のみならず群馬県全体に活気があります。しかしながら、歴史をひもとくと、長野県も有力な候補地の一つであったこともさることながら、岡谷、諏訪、上田等の製糸業においても富岡製糸場とは親兄弟のようなつながりがあります。

 例えば、岡谷、諏訪で開発された自動操糸機のおかげで生糸の品質も生産能力も飛躍的に伸びました。しかも、片倉工業は、昭和63年に富岡製糸場の操業を停止してからも、年間1億円前後の維持費をかけて建物や機械を18年間守り抜いてきました。あるいは、八十二銀行の前身の一つである第十九国立銀行を創立し、頭取として信州の養蚕業を金融面で支えた黒澤鷹次郎を初め、日本の生糸が世界を席巻した原動力として多くの信州人が携わっているわけですから、本県もそれを誇りに思い、後世に伝えていく必要があると思います。

 本年8月には岡谷蚕糸博物館もオープンし、実際の作業も見学することができます。ぜひ、本県としても、産業遺産やその歴史を観光の一つの目玉として積極的にアピールするべきだと思いますが、観光部長のお考えをお聞かせください。

 阿部知事は、今定例会の所信表明の中で西郷隆盛の言葉を引用しました。どんなに方法や制度のことを論じようとも、それを動かす人がいなければだめであるということでありますが、現場を動かす技術者に若者が魅力を見出せず、減り続けている状況をどのように考え、どのように改善されるおつもりか。御所見をお伺いいたします。

 また、新県立大学基本構想の中では、さまざまな場面でイノベーションを創出し、地域のリーダーとなる人材を育成すると心躍るような理念がうたってあります。しかし、グローバルな視野を持った人材あるいはイノベーションを創出できる人材を育成するためには、ものづくりに対する理解と職人に対する尊敬の念も必要であり、机の上の勉強だけでは立派な人材に育つとは到底思えません。

 このような観点から、新県立大学ではどのような人材を育成されるおつもりであるのか。理事長候補者、学長候補者も決定しましたので、知事の熱意ある答弁をお聞かせいただき、一切の質問を終わりにします。

 

◆教育長(伊藤学司)

 ものづくりの歴史を教えることについてのお尋ねでございますが、学校におきましては、小学校の図画工作や中学校の技術の時間において、子供たちがみずからの手を動かすことを通じ、ものづくりの重要性や喜びを学ぶとともに、社会の時間では、近代の日本の発展においてものづくりなど近代産業が果たしてきた役割について学んでいるところでございます。

 また、道徳の時間におきましては、国家の発展や伝統文化の継承に貢献する力を子供たちに育むことを目指す中、道徳の教材である「私たちの道徳」では、先人の伝記として、具体的には渋澤栄一、豊田佐吉、井深大、本田宗一郎など、日本のものづくりを支えた人物の生き方に触れるとともに、ものづくりの歴史を学んでいるところでございます。

 議員御指摘のとおり、日本のものづくり文化やそこに携わった人物について学ぶ機会を持つことは、我が国の歴史に対する愛情を育むとともに、生徒にとって自分の生き方や将来を考えさせる上で大変重要であると認識をしておりまして、こうした教育を推進していきたいというふうに思ってございます。

 次に、ものづくり文化の醸成と学校教育についてでございますが、ものづくり文化の醸成のためには、学校のみによる取り組みではなく、地域全体で子供たちにものづくりの重要性を教えていくことが大切と認識をしてございます。このため、県教育委員会では、地域のものづくり企業などの御協力をいただいてキャリア教育の推進を進め、児童生徒がものづくりの魅力に触れる学習に取り組んでいるところでございます。

 例えば、諏訪市の小中学校では、地域企業等と連携し、ものづくり科という教科を設けまして、児童生徒が実際に物をつくる体験を通し、つくることの楽しさや工夫することへの喜びを実感しているところでございます。

 本県にとりましてものづくりは大変重要な産業でございまして、今後も、地域のものづくり企業やそこに勤められておられる保護者の御協力もいただきながら、学校、家庭、地域が一体となったものづくり教育を進め、家庭も含めた地域全体でのものづくり文化の醸成に寄与してまいりたいと考えております。

 

◆産業政策監兼産業労働部長(石原秀樹)

 技能五輪開催の効果についての御質問でございます。

 長野技能五輪の開催を契機に盛り上がりました技能への関心と技能尊重の機運を一過性のものとせず、さらに若者の関心がものづくりに向くようにすることが大切と考え、信州ものづくりマイスターによる高校生への講習や実演、スキルアップ講座における技能検定や競技大会向けの講座の開催など、若者の意識啓発と技能習得の支援に取り組んできたところでございます。

 こうした取り組みによりまして、近年では技能検定を受験する高校生の数がふえております。その数は、平成20年度の147名から平成25年度には328名とこの5年間で2倍以上に増加しております。

 また、ことし7月に山形県を中心に開催されました若年者ものづくり競技大会では、本県から2名の高校生が参加し、電子回路組み立て部門で第1位、旋盤部門で第3位というすばらしい成績を残しております。

 これらは、技能五輪開催後の地道な取り組みが徐々にではありますが実を結んできたものと考えており、引き続き、関係団体と連携を図りながら、将来のものづくりを支える若者の育成に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。

    

◆観光部長(野池明登)

 産業遺産やその歴史を積極的にアピールすべきとのお尋ねでございます。

 富岡製糸場の世界遺産登録を受け、岡谷市で8月に移転オープンした蚕糸博物館には、開館から2カ月で当初見込みの3倍以上となる1万6,000人余の入館者があったところでございます。これに先立つ7月に、県では、東京、名古屋、大阪で旅行会社を対象とした商談会、マスコミを対象とした懇談会を開催をいたしまして、岡谷市の皆さんと一緒に蚕糸博物館をPRをしたところでございます。

 また、富岡市、安中市、軽井沢町では、近代化遺産による広域観光連携のための協議会を本年4月に発足をさせ、現在、周遊ルートづくりなどを進めているところでございますが、本日、本県からも出席をいたしまして2市1町の会議が開催されており、これを受けまして県としての必要な支援を検討する予定としております。

 県では、今後も、観光情報誌や商談会で県内各地の産業遺産を積極的に情報発信するほか、諏訪市の片倉館などの産業遺産は映画のロケが行われた実績もございますので、フィルムコミッションの活動を通じた発信にも努めまして、本県の数々の産業遺産が魅力ある観光資源となるよう積極的にアピールをしてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

 

◆知事(阿部守一)

 ものづくりに関連して、若年技術者の減少の状況をどう考え、どう改善するかという御質問でございます。

 長野県にとっても日本全体にとっても、ものづくり、大変重要な位置づけがあると考えています。特に、若者のものづくり離れによります技術者の減少、これは、長年培ってきた技能、技術が伝承されずに喪失されてしまう、また地域産業の持続的な発展が阻害されてしまう、そういった観点で大きな問題だというふうに考えております。

 そうした観点で、まずは若者にものづくりに対する興味あるいは関心を持っていただくということが重要だと思っています。関係団体とも連携して取り組んでおりますが、例えば小中学校、高等学校に技能五輪のメダリストあるいは信州ものづくりマイスターを派遣して、ものづくりの楽しさ、あるいはたくみのわざを伝える講座を開催しております。

 また、教育委員会におきましても、長野県キャリア教育支援センターを中心として、児童生徒の職場見学、就業体験、こうしたことを実施をしています。

 また、ものづくり技能者の社会的地位を向上させるという観点で、毎年卓越した技能者の表彰をさせていただいております。

 長野技能五輪、アビリンピックによりまして技能への関心が高まったわけでありますが、一過性に終わらせてはいけないというふうに考えております。関係団体と連携して、若年技術者の育成確保、今後ともしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

 続きまして、ものづくりに対する理解、そして職人に対する尊敬が必要という観点からの新しい県立大学、どういう人材を育成するかということでございます。

 ものづくりの文化あるいは現場、こうしたものを理解した人材を育てていくということは私も重要だというふうに考えております。

 今回、安藤国威氏、理事長予定者として選任をさせていただきました。安藤氏は、日本を代表するものづくり企業、ソニーのトップとしてまさに日本のものづくりをリードし、また、ものづくりの分野でイノベーションをみずから進めてこられた方であります。

 大学について安藤氏が語っている部分を少し御紹介すると、長野県には高い技術を持った企業がたくさんあります、そのすぐれた技術力を世界に結びつけていくとすばらしい成長の機会があると思います、新しい県立大学から新しいリーダーを輩出することによって、そういう潜在的な成長能力を秘めた企業と大学が一緒になって連携し世界市場と直接結んでいく、大学にはそういった役割もあると思っていますというふうに語っていただいております。私も同様の認識でございます。

 新しい県立大学、お話ありましたように単に机上の勉強だけではいけないというふうに思います。県内企業の皆さんにも御協力いただく中で、地域に出て課題探求型の授業でありますとか、あるいはインターンシップを実施をしていく考えでございます。また、企業の現場で活躍されている実務家による授業も取り入れていきたいと考えております。

 こうした教育を通じまして、長野県の強みでありますものづくりのすぐれた技術力を生かす上でも、現場を重視し、マネジメント力を持ち、新しい発想でイノベーションを創出できる人材の育成を図ってまいりたいと考えております。

 以上です。

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