2月定例県議会-発言内容(下沢順一郎議員)

 

◆下沢順一郎

 いわゆるアベノミクスについてお聞きしてまいります。

 1月に、スイス東部ダボスにおいて、世界経済フォーラムの年次総会、いわゆるダボス会議が行われました。

 先日、参加者である竹中平蔵氏の講演を聞く機会がありました。その中において、竹中氏は、久しぶりに日本の存在感が高まったと評し、3点を挙げています。第1に、ユーロ危機の見通しが立たなかった昨年に比べ、ことしは事態がやや好転しているように感じた、第2に、フィナンシャル・タイムズの主席経済論説委員を初め多くの要人がアベノミクスを高く評価し、ダボス会議では正面から日本を批判する声は聞かれなかった、第3に、領土をめぐる日中対立を世界が心配している、GDPの世界第2位、第3位の国の対立による世界経済への影響を心配しているということでありました。

 一方、ドイツのメルケル首相は、各国の為替政策に関し、今の日本をやや懸念していると指摘、今回の日銀が決めた追加金融政策が人為的な円安政策で貿易相手国の経済に打撃を与える可能性があると不快感を示しています。

 イングランド銀行のキング総裁も、日本の金融緩和策が各国の通貨引き下げ競争をもたらすと懸念を示しています。

 そして、IMFのラガルド専務理事は、2013年に最もリスクの高い国はという質問に対して日本と答えたといいます。当面の財政拡大は仕方ないにしても、中長期的に財政再建ができない状況になれば大きなリスク要因となるとの指摘です。竹中流に言うと、日本の言っていることは正しいが本当にできるのか、できなければ円が暴落する可能性もあるというものです。

 そこで、何点かお聞きしてまいります。

 今回の安倍内閣では、現在、策定に向けて日本経済再生本部で成長戦略が審議されておりますが、競争を基本とする規制緩和、市場開放を目指す考え方が強いようです。しかし、竹内議員が代表質問で指摘したとおり、どのような成長戦略を立てようが、成長を前提とした景気の回復には雇用の確保と賃金の上昇が必要であります。このまま物価だけが上がり賃金が上がらなければ消費は拡大しないため、不況でありながらインフレが起こるいわゆるスタグフレーションです。困ったことに、その兆候が見え始めています。

 1月の貿易統計も円安による輸入超過が指摘され、貿易赤字は1兆6,294億円に達しています。LNG、原油など化石燃料の高騰によるとされています。東海3県の上場企業で21日に発表された決算集計によると、通期予想を公表した175社のうち16社が純利益を上方修正した一方で、23社が下方修正しています。据え置きは136社。賃上げについては、2013年度に社員の賃金や一時金の増額を見込んでいる割合は全国平均39.3%、東海4県は38.5%。経営者たちは賃上げに対して依然慎重な姿勢を崩していないようです。

 そこで、このような急激な円安によって長野県内企業にどのような影響が出ているか。お聞きします。

 また、雇用の確保、賃金上昇などの対策について企業経営者の皆さんとどのような話し合いがされているのかも商工労働部長にお聞きいたします。

 昨年10月から12月の需給ギャップは45兆円にも膨れ上がっておりますが、その解消手段として、資金の流通量が不足している分、GDPの3%程度として今回の補正予算が立てられたと竹中氏は言っておられました。

 これを埋めるだけの需要を政策的につくり出せばギャップが直ちに解消してデフレから脱却できるはずだというものですが、これに対して、白川総裁は次のような発言をしています。

 確かに需要不足が純粋に一時的なものである場合にはそうした議論に妥当性はありますが、注意しなければならないのは、需給ギャップというのはあくまで現存する供給構造を前提に、それらに対応する需要不足を捉えたものにすぎないという点です。そして、高齢化や女性の社会進出、価値観の多様化などによって新しいタイプの需要が潜在的に生まれています。変化の激しい経済にあっては、需給ギャップは既存の財、サービスの供給に対する需要不足のみを捉え、新たな潜在需要に対する供給不足を捉えていないという意味で非対称な概念となっています。言いかえると、本来、需給のミスマッチと認識すべき部分まで需要不足という形で示されているということです。

 やはり需給ギャップに見合う政策も必要だが、潜在需要の掘り起こしとそれに伴う政策対応が大切であり、国の方針だけでなく、県独自の視点でつくり上げられた新しい総合5カ年計画の推進に当たっては、特に産業・雇用施策においては、どのように景気回復につながるのか、雇用促進につながるのかなど成果を意識しながらの施策展開が必要だと思われますが、施策の進捗状況をどのように把握し、どのように生かしていくのか。商工労働部長にお聞きいたします。

 次に、公共事業の拡大による国の借金のさらなる膨張まで内包して、アベノミクスは綱渡りをしているようです。デフレは放置できず、さりとて財政規律をほっておけば金融危機に陥る。したがって、IMFのラガルド専務理事が指摘しているように財政再建はどうしても必要です。首相は、物価上昇率2%を続けながら七、八年かけて行っていくとしています。

 財政再建は歳出のカットや増税が避けて通れないのですが、2020年には基礎的収支をゼロにするとしているだけで、それに至るシナリオはいまだ明らかではありません。

 例えば、今回の補正予算では、歳入面においては5.2兆円の国債を発行するとともに、基礎年金の国庫負担を賄う財源である年金特例公債2.6兆円を発行するため、補正予算全体の国債発行額は7.8兆円余りに達しています。12年度の国債発行額は52兆円になるため、財政規律の面からも大変です。

 また、年金特例公債は将来の消費税増税を財源としているため、既に増税が織り込み済みということになります。しかし、増税は景気の回復が約束されてからということですから、財源としては不安定です。今後、このように不安定なままの財政運営の中では、地方交付税削減など少なからず地方自治体への影響は杞憂するべきものです。

 そこで、地方への影響を抑えるためにも、国に対して、財政再建への道筋について早急に整えるように提案していくべきだと思いますが、いかがでしょうか。知事にお聞きいたします。

 

◆商工労働部長(太田寛)

 いわゆるアベノミクスにつきまして3点の御質問でございます。

 まず、急激な円安が県内企業に与える影響についてでございます。

 商工労働部では、今月上旬に、県内企業約五百数十社から急激な円安による影響について書面、そして面接による聞き取りを行ったところでございます。まず、輸出の割合が高い製造業者では、為替差益によります収益の改善や海外企業との価格競争力強化に伴う受注、生産の拡大を予想しております。円安による輸入原材料価格の上昇を加味しても、円安は好影響と見込む企業が多く見られるところでございました。また、円安傾向が継続すれば、従来、抑制傾向にありました輸出型企業の設備投資が増加することも期待されている企業もございます。

 一方で、食品加工業など原材料の輸入が多い製造業者や灯油の使用量が多い小売業、飲食業、宿泊業者などでは、大豆や原油等の輸入原材料価格の上昇が継続すれば収益への影響も考えられるというふうな危惧をしているところもございました。電気料金の値上げ、これを懸念する声もございました。

 このところの円安・株高傾向によりまして企業マインドに明るさが見えている、これが基本の線ではございますけれども、今言った状況を踏まえまして今後の為替の動向を注視してまいりたいと考えております。

 2点目でございます。雇用の確保、賃金上昇などに関します企業経営者との話し合いの状況でございます。

 雇用の確保、それから安定した収入を得るということは、県民の皆様の安心、安全な生活の確保、継続に直結しておりますし、大変重要な課題と認識しております。

 県では、昨年秋以降、大規模な人員整理が続く状況を受けまして、県内の企業約200社を直接訪問いたしまして、その中で、現状と今後の見通しや必要とする支援策などを直接お聞きしたところでございます。その結果、多くの企業においては、円高の中でございましたが、まず人件費以外のコストカット、第2といたしまして競争力強化のための新商品の開発、第3といたしまして購入・調達先の変更、開拓等によりまして対応していることを把握いたしたところでございます。

 昨年末以降も、阿部知事を初め、私も、県内の企業経営者との間でさまざまな機会を利用して意見交換を行っております。その中では、アベノミクスによる効果については一定の効果はあるということで評価がございますが、雇用拡大、賃金アップに結びつくためにはまだ一定の時間がかかるのではないかという感触を私は得ているところでございます。

 また、雇用の確保に関しましては、去る25日に、知事が直接経済4団体を訪問いたしまして、長野労働局と連携して、新規学卒者の積極的な採用を要請したところでございます。その中で、各団体からは、採用の働きかけに向けまして前向きな発言をいただくとともに、就職を希望している若者全員が就職できるよう協力して取り組んでいるところを確認したところでございます。

 賃金に関しましては本来的には経営側と労働側の個別交渉により決定されるものでございまして、この点に関しましては、2月6日に長野県経営者協会と連合長野との間で懇談会が開催されまして、今春闘の交渉が本格化している段階にございます。今後の動向を見守ってまいりたいというふうに考えております。

 それから、3点目でございます。産業・雇用施策における施策展開と進捗状況の把握でございます。

 国内の既存市場が縮小する中で、潜在的な需要や多様化する消費者のニーズを見きわめまして、成長する国内外の市場に積極的に展開することが需給ギャップの解消、産業の活性化につながるものと考えております。

 新たな総合5カ年計画の次世代産業創出プロジェクトにおきましては、顧客ニーズに適合した研究開発や国内外の成長市場に向けました展示会出展を支援していくことによりまして新たな需要の確保を目指す所存でございます。

 また、雇用の促進に向けましては、同計画の雇用・社会参加促進プロジェクトによりまして、女性や若者、高齢者や障害者の雇用と社会参加を部局横断により推進してまいることになっております。

 これらの先導的な取り組みやその成果につきましては、県民や県内企業の皆様に広く発信し、さらなる取り組みを呼びかけることによりまして県内に広く波及するよう努めてまいる所存でございます。具体的には、個々の事業成果進捗状況につきましては、例えば展示会出展に関する事業では商談件数というように具体的な取り組み目標を定めまして進捗状況の把握に努めたいというところでございます。

 プロジェクト全体の成果につきましては、次世代産業創出プロジェクトが1人当たりの県民所得を全国10位以内にする、それから創業支援基金利用件数は計画期間中累計で2,400件、また企業誘致件数につきましては同じく計画期間中に累計200件を目指すということとしております。

 雇用・社会参加促進プロジェクトにおきましては、就業率につきまして全国第1位の維持、また県内高校生の就職率が100%、大学生の就職率が95%、こういったものを達成目標に定めまして、毎年進捗状況を把握してまいることとしております。

 その結果につきましては、検証を行い、検証結果をもとにさらなる支援の検討を行ってまいりたいと考えております。

 

◆知事(阿部守一)

 国に対する財政再建の提案についての御質問でございます。

 平成25年度末の国の公債残高、750兆円程度という見込みになっています。長期債務残高が増加するということは、政策の自由度の低下を招き、経済、財政、国民経済に影響を与えかねないということで、財政健全化への取り組みということは日本にとっても重要なテーマだというふうに思っております。

 国の財政健全化に向けた動きとしては、経済財政諮問会議で中長期の財政健全化を実現するための取り組みのあり方、経済再生との両立を実現するための道筋について検討を行うということで聞いています。6月に経済・財政運営の基本方針であります骨太方針を取りまとめて、8月ごろには財政健全化目標を実現するための中期財政計画を策定するということで報道されているわけで、私どもとしてはその動向を見きわめなければいけないなというふうに思っています。

 骨太方針の検討課題、主要歳出分野における効率化、重点化という項目の中に地方財政という項目があるわけで、ここに地方財政が出てくることがどういう意味合いなのかなというところはいささか心配なところが正直あります。ここの議論を見きわめて、必要に応じて他県と協調して政府に対して言うべきことは言っていかなければいけないだろうというふうに思っています。

 これまでも、知事会等を通じて、国の出先機関の原則廃止、あるいは地方並みの人員削減の取り組みというのを求めています。

 今回、給与の話で、国が給与削減とあわせての地方交付税削減という取り組みをしてきたわけですけれども、職員数、国の非現業と都道府県の一般行政を見れば、平成13年から22年の職員数、都道府県は平成13年を100とすれば82.1ですが、国は97.4ということで、私ども地方の立場から見ればまだまだ国の行革努力は地方に比べて十分ではないんではないかという問題意識を持っています。

 引き続き、地方分権の視点で、国に対して財政再建、財政健全化の取り組みを求めていきたいと考えています。

 以上です。

 

◆下沢順一郎

 総合5カ年計画に関しては、相談件数等非常に具体的な進捗状況を把握されていくということですので、しっかりとお願いしたいなと思いますし、それが長野県経済の発展の基礎になっていくんじゃないかなというふうに思います。

 それから、6月のまとめの動向を見ながらいろいろと見きわめてというようなお話でございます。またしっかりとした御判断をお願いできればというふうに思います。

 IMFのラガルド専務理事は、所得格差が今後の世界のリスクになるとした世界経済フォーラムの報告書にも言及し、過度の所得格差が成長を妨げ、社会をむしばむと主張し、包括的な成長の必要を提唱しています。

 具体策において、女性雇用率を男性並みに引き上げれば、日本のGDP(国内総生産)は9%もふえるなどの試算を挙げ、若者、女性の雇用改善を訴えています。これは、幼稚園、保育園や女性が働くためのサポートを充実し、社会的にも職業婦人を認めれば、女性の労働参加が進むことで構造改革が進展し、日本経済を救うことができるというものです。

 白川日銀総裁も、女性の就業率を向上できれば労働力人口もマイナスからプラスに転換するだろうとしています。

 また、女性が進出するためには男女の固定的な役割分担意識が障害となっていることも否めません。その結果、社会のあらゆる分野における女性の活躍の機会が失われています。行政として、長野県の女性がさらに輝いていくような総合的な取り組みが必要だと思いますが、そのための施策展開を、その期待する効果とともに企画部長にお聞きいたします。

 

◆企画部長(原山隆一)

 女性がさらに輝いていくような総合的な施策展開についてというお尋ねでございます。

 議員御指摘のとおり、女性の活躍の支援というのは人口減少下の社会、経済の活力を維持する上で大変重要な課題だと思っております。このため、新たな総合5カ年計画では、雇用・社会参加促進プロジェクトの中にしっかりと位置づけまして積極的に推進していきたいと思っております。

 具体的には、四つの視点から取り組みを進めてまいりたいと思っています。

 一つ目は、仕事と子育て、介護などとの両立ができる環境整備を促進するという視点でございます。このため、ワーク・ライフ・バランスセミナーの開催でありますとか先進的な取り組みを行う企業等の表彰、あるいは短時間勤務制度など多様な働き方の研究とその普及、男性の子育て支援等に取り組みたいと思っております。

 二つ目は、安心して子育てができる環境づくりを促進するという視点であります。病児・病後児保育、休日・夜間保育など多様な保育サービスの提供や放課後児童クラブの運営の支援を進めていきたいと思います。

 三つ目は、女性の能力を発揮できる環境づくりを進めるという視点であります。企業トップに対しまして女性登用や労働環境の整備を働きかけますほか、女性向けの創業セミナーの開催等創業支援も行ってまいりたいと思います。

 4点目といたしましては、女性の再就職を支援するという視点でございます。子育てや介護などによりまして離職した女性への職業訓練の実施でありますとか、看護職員、介護職員等の再就職支援等を行ってまいりたいと思っております。

 これらの取り組みを総合的に展開することによりまして女性の活躍の場の拡大を図りまして、本県経済、社会の活性化を目指してまいりたいと思っております。

 以上であります。

 

◆下沢順一郎

 海外の投資家は、日本景気はこの春先から失速するのではないかという懸念があり、これからの日本への投資に二の足を踏んでいるとの報道がありました。1月のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録が公表され、複数のメンバーが現在行っている国債などの購入の規模を縮小する用意が必要だと指摘しています。アメリカでも3月には強制的に財政削減が発動しそうです。

 いわゆるアベノミクスの登場以来、にわかに現出した円安・株高に日本が沸いています。しかし、その為替市場、特に円ドル相場の動向を左右しているのは2兆3,000億ドルに達しているヘッジファンドの運用資金にほかなりません。

 ゴールドマン・サックスの会長であるジム・オニール氏は、2012年2月に出したレポートで、要約しますと、円と日本国債はバブルであるとして円売りと日本株買いが最良の戦略と表明していました。その折、円レートの目標設定値は3年以内に100円としていたものを、最近は2年以内に100円から120円と修正しています。

 ここで心配しなければならないのは、円安が行き過ぎた場合のリスクをミスター安倍は軽く見過ぎているというファンドマネジャーの指摘です。株買いが一巡すると、当然ながらヘッジファンドは手持ち株や国債のリスクヘッジを考えます。ジム・オニールの戦略の中に、円売り、株買いと並んで、日本国債売りも入っているということを肝に銘じておく必要があります。スタグフレーションが起これば、長期金利の上昇の可能性は日に日に高くなっていくのです。

 続いて、県立4年制大学についてお聞きいたします。

 秋田教養大学の学長であり検討委員会のメンバーでもありました中嶋先生が、2月14日、御逝去されました。御冥福をお祈り申し上げます。

 先生は学生が教養を身につけることの重要性を常に話されていました。それが国際的な素養になり、それを身につけた人材の育成こそ大切であるとされていました。後ほど先生の思いについてお聞きいたしたいと思います。

 阿部知事は県立短期大学を4年制大学に移行することをいつ決断したのかという疑問が話題になることがありました。県立4年制大学は村井知事からの懸案であり、阿部知事はそれを引き継いで進めているだけだという意見もあります。

 そこで、しっかりと確認しておきたいのですけれど、2010年8月26日の知事会見で、村井知事は、これまではやはり公立短期大学というのが全国的にも非常に数が少なくなっている中で、それに対する不満というか、そういう問題意識が関係者の間で非常に強まっていたものですからあえて取り上げて、どうしようかということを議論していただいて、大きな流れとしては4年制化が望ましいのではないかという話になってきていますが、それ以上の話に煮詰まっていませんと述べられていました。

 その後、阿部知事が就任され、昨年、県立大学設立準備室を立ち上げたわけですから、4年制大学は阿部知事が決断し進めている案件であると思いますが、それでよろしいか。また、そうであれば、知事が決断に至った理由について確認をさせていただきたいと思います。

 先日の知事の議案説明をお聞きしていますと、多様な御意見を踏まえ、目指すべき大学像を未来を見据えてしっかりと描くことが重要であると考え、昨年中の基本構想取りまとめにはこだわらず基本構想を策定してまいりたいと説明されていました。

 昨年11月に提出された基本構想は、知事御本人の意思がしっかりと反映されたもので、自信を持ってまとめ上げたものだったのではないでしょうか。それにこだわらないということは、どのような位置づけのものだったのでしょうか。前回議会に提出した構想に対する自己評価をお聞きいたします。

 知事は、以前、長野県の副知事として当地におられ、その後、横浜の副市長になられていたのを再び長野県に戻られたわけです。つまり、長野県への思いがそれだけ強いと思うのですが、とすると、長野県の高等教育機関の状況についてもよく御存じのはずです。ならば、御自身の思いの中で、長野県の大学、高等教育機関に一体何が足りない、何を変えれば一層よくなると考えていたのでしょうか。お聞きいたします。

 また、新たな県立大学は、長野県の持続的な発展をさせていく人材を育成することはもとより、知の拠点として地域の振興に貢献するとともに、長野県の高等教育全体の充実に資するものとすることが重要だと説明されています。長野県の持続的な発展をさせていく人材とは何が必要とされる人材とお考えですか。お聞きします。

 また、私が、秋田教養大学に行き、中嶋先生にお会いしてきたときのことです。中嶋先生は、人間にとって、人生にとって一番大事な経験は知的経験だと言っておられました。そして、以下のように述べられました。

 知的経験とは、教養に支えられた個々人の決断によって獲得された実践的な体験だ。そのような知的経験がふえることで誰でも豊かな人生を送ることができる。教養の語源は「後漢書」の教え育てるにあり、教養兼施というように、教育と養育をあわせ行う意味もある。西洋では自由な学問のアート(技芸)を修めることが教養と言われているのです。そして、このような教養教育の目的は、もちろん知識を広め、理解を深めるのと同時に、問題解決のための能力をいかに身につけさせるかということです。そして、クリエーティブな思考方法や新たな探究心を身につけ、それらを通じて多角的な判断が下せることを身につけることが大切なのです。しかも、それは、現代のようなグローバル化の時代には、まず国際語の英語でもって、英語で考える、英語で解決するという方法を身につけることが大切なのだよ、だから英語の授業をやるんだと教えていただきました。

 阿部知事は、記者の質問に対して、今後も先生の思いを生かせるようにしたいと述べられていたようですが、何をどのように生かそうと思われたのでしょうか。お聞きいたします。

 また、国際教養大学は、年間17億円の予算を組み、そのうち11億円の県費を投入し運営しています。本県でも、新たな県立4年制大学に対して同様の県費負担を視野に入れているのかどうか。知事にお伺いいたします。

 

◆知事(阿部守一)

 県立4年制大学についての御質問に順次お答えをしたいと思います。

 まず、私が決断したのかということ、これはそのとおりでございます。昨年の2月定例会の場におきまして4年制大学を開設するという方針を示させていただいたわけでありますので、まさに私が責任を持って進めてまいりたいと考えています。

 長野県、大学の収容力、全国の中でも最低水準にあるということで、大学進学者の8割以上が県外に流出しているという状況であります。私、かねてから、大学、日本の場合は都市部に集中し過ぎではないかという問題意識を持っています。道州制の議論もありますが、これから地域の自立ということを考えたときには、知の分権ということなしには自立した地方の実現はできないというふうに思っています。

 今日、独自の課題に向き合って、それぞれの地域の強みを生かしていくということが求められているわけでありますけれども、そのためにも、それぞれの地域にグローバルな視点を持ちながらも地域社会にイノベーションを起こしていくことができる人材というのが不可欠だというふうに考えています。

 こうした観点で、長野県の高等教育、厚みを増していくことが必要だというふうに思っておりますし、また、人材育成のみならず、研究機能を大学は持っているわけでありますので、そうした観点で、知の拠点として地域課題、県政課題に対応できる基盤というのが極めて重要だと。そうした思いから新しい県立大学の設置が必要だというふうに判断したところでございます。

 次に、基本構想素案の評価ということであります。

 この素案の位置づけ、将来構想に関する検討委員会の報告書を踏まえて、県立大学設立準備委員会での議論を取りまとめて事務局が提示したものという扱いであります。幅広く意見を募って、さらによいものに高めていくための案という形であります。

 とはいえ、私としては、たくましく生きる力を育成する、あるいは主体的に課題解決する実践力を養成する、そして勉学の志を全うする、先ほど申し上げたグローバルな視点でイノベーションを起こす人材を育てようという基本構想の素案で示されている考え方については、私としては基本的な方向性は同じ思いでございます。

 今、さまざま県民から御意見いただいているところでありますので、そうしたものも踏まえてしっかりと方向づけをしていきたいと考えています。

 高等教育機関の何を変えればよくなるかということでありますが、高等教育機関を変えるというよりは、長野県の中での高等教育のさらなる充実を図っていくということが、先ほど知の分権ということを申し上げましたが、重要だというふうに考えています。

 長野県の私立大学、あるいは信州大学、地域貢献度で非常に高い評価を受けている大学が多いわけであります。そうした大学に県としてもさらにしっかりとコミットしていくということが重要だと思いますし、あわせて、県立大学と他の大学とが連携して県全体の高等教育を振興していくということが重要だと考えています。

 そうした観点で、産学協働人財育成円卓会議、これは、経済界、そして大学の皆さんと一緒に立ち上げていきたいというふうに考えております。従来、ともすると県としては初等・中等教育にばかり目が向いていたところがありますけれども、今後は高等教育についてもしっかりと目を向けて、県内の大学と一緒になって取り組んでいきたいというふうに考えています。

 それから、持続的な発展をさせていく人材に何が必要かという御質問でございます。

 持続可能な発展には、先ほど申し上げたように日本の固有の文化、風土というものにしっかり根差しつつも、グローバルな視野を持っている人材ということが必要だと思います。また、これからはこれまでの延長線上で物事が解決できる時代ではないわけであります。地域にとっては、地域の資源を活用して新たな価値を生み出していく、そうしたイノベーションを創出することができる人材が不可欠だというふうに考えています。

 企業活動においても、長野県、中小企業が多いとはいえ、グローバルな視野なしには企業活動もできないわけであります。私ども行政を初めとする公共分野においても、世界的な動向を語ることなくして次の時代は語れないという時代であります。

 ぜひ、こうしたグローバルな視点をしっかり持って、地域の課題解決に志高く取り組める人材、こうした人材がこれからの長野県、これからの地域社会にとって不可欠だというふうに考えています。

 それから、中嶋嶺雄先生についての御質問でございます。

 まず、中嶋嶺雄先生の御冥福を心からお祈りを申し上げます。さまざま今回の県立大学についても御助言をいただいていたわけでありまして、私としても大変残念な思いでいっぱいでございます。中嶋先生と接する中で、非常に教育に対する強い思い、そして長野県に対する愛情というものを常に感じる中で御指導を頂戴してまいりました。

 中嶋先生は、世界を視野に活躍できるグローバル人材の育成の必要性、これからの日本にとってのこうした人材の必要性ということを常に熱く語っておられました。秋田に開設された国際教養大学、まさに中嶋先生の思いを体現したものだというふうに思っています。

 また、ある意味で大学教育のこれまでのあり方に一石を投じられた方だというふうに考えています。今回の素案に、実践的英語力、あるいは日本や諸外国の文化を理解する力を持ったグローバル人材の育成、それから、本気で勉強して確かな実力を身につけて卒業する仕組みといったようなことは、これは中嶋先生のお話を伺う中で議論が出てきた部分でございます。

 地域においてこれからグローバルな視点が大変重要だということは私も中嶋先生と同意見でありますので、これまで賜ってきた御意見、あるいは中嶋先生のこれまでのお取り組みを十分尊重しながら取り組んでまいりたいと考えています。

 それから、県立4年制大学の運営費についてであります。

 これは大学教育の中身によっていろいろ変わってくる部分があろうかというふうに思いますが、例えば国際教養大学、1年間の留学を必修とする一方で、多くの留学生を受け入れるということで、全ての授業を英語で行っているという特徴的な教育を行っています。そういう意味でグローバル人材の育成に高い評価を得ている大学であります。

 新しい県立大学、国際教養大学と全く同じ学習内容ということであるわけではないわけですけれども、ただ、教育内容を充実していく上では、教授陣を充実させることも含めて、しっかりと経費をかけていく、予算づけをしていくということが必要だと。中途半端な形ではいけないだろうというふうに思っています。

 学部・学科構成、教育の特色等により運営費については確実にこの程度というふうに現時点では申し上げにくいわけでありますけれども、例えば短期大学の将来構想に関する検討委員会において、現在の短期大学の学科、それから入学定員をベースとした場合に、運営費全体で17億円程度、うち一般財源10億円程度という試算もお示しをしています。こうしたものも踏まえつつ、教育内容をしっかりと充実させることができるような取り組みを進めていきたいというふうに考えています。

 以上です。

 

◆下沢順一郎

 最後に、2点だけ知事にお聞きしたいと思います。

 1点目は、私立大学のそれぞれの学長さんがいろいろ御心配されています。私立大学の学長さんにこの前の段階でおっしゃりたいことがあったらぜひお願いしたいなと思いますし、それから、知事の思いを推進すると学生のレベルは一体どの程度のレベルなんだというふうに思います。

 その2点をお聞きして、そして知事の考え方をしっかり出して進めていっていただければというふうなことを述べさせていただきまして、私の質問とさせていただきます。

 

◆知事(阿部守一)

 お答えします。

 まず、県内の私立大学の学長の皆様方からの懸念についてということであります。

 これは、私も、恐らく逆の立場であれば同じような発言をするであろうという部分もございます。先ほど申し上げたように、私としては、県立大学だけがよければいいという話ではなくて、長野県の高等教育全体の発展を考えていかなければいけないと。私は県立大学の設置者という立場でありますが、もう一つは県知事という立場で県内の大学に対してもしっかり応援していく立場でございます。

 そういう観点で、各大学のお考えについては十分お伺いをした上でしっかりとした方向づけ、大学の皆さんの御意見も踏まえつつ、県民全体にとって何が望ましいかという観点で判断をしていきたいと考えています。

 それから、学生のレベルということですが、なかなかレベルというのは難しい部分がございますが、これは、中嶋先生を初め顧問の皆様方とお話をしていく中で、単に入学試験の成績だけということではなくて、大学の入学者の選抜方法自体もこれからはしっかり考えていかなければいけないだろうというふうに思っています。例えば、高校との連携を進める中で、学生の意欲、高校生活の蓄積、あるいは社会活動、そうした中から学生の潜在力を重視した選抜方法ということも重要な視点だというふうに考えています。

 そういう意味で、従来の単に1回限りの勉強ができればいいということだけではない、もう少し幅広い観点で学生の選抜をしていかなければいけないと思いますし、そうした力を見抜くことができるような選抜方法を考えていかなければいけないだろうというふうに考えています。

 いずれにいたしましても、私自身が決断した県立大学でございますので、大勢の皆様方の御理解がいただけるような大学を責任を持って設立すべく進めていきたいと考えています。

 以上です。

 

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